心疾患コラム Vol.1 心不全パンデミック時代:心臓の健康を考える
心不全パンデミックとは?
心不全パンデミックとは、心臓がうまく働かなくなり、体の様々な臓器に十分な血液を送れなくなる心不全(Heart Failure: HF)が世界的に急速に増加し、医療、社会、経済に多大な負担を与える状態を指します。この現象は主に高齢化や生活習慣の変化により引き起こされており、特に先進国や一部の新興国で深刻化しています。
心不全パンデミックが進行中!
世界と日本での心不全患者数の増加
現在,世界の心不全患者数は3,000万人に達する勢いです。令和2年(2020年)の日本における心不全患者数は約120万人と推定されており、超高齢化により患者数は今後増え続けると言われています。実際に、2013年以降、概ね年に1万人以上の割合で入院患者数が増加しています。
高齢化と生活習慣病が引き金
年齢を重ねるにつれ、心臓のポンプ機能が低下し、血液を全身に送り出す力が弱まるため、心不全になりやすくなります。実際に高齢者ほど心不全の発症率は高く、高齢化は心不全患者の増加に直結します。また、生活習慣病である、高血圧・糖尿病・脂質異常症は、どれも心不全リスクを高めることが知られています。例えば、高血圧は心臓に大きな負担をかけ、心臓の筋肉肥大や血管を傷つけ、心不全の発症リスクが高まります。また、糖尿病や施脂質異常症は動脈硬化を促進し、心臓への血液供給を阻害し、心不全を引き起こす可能性があります。肥満は、これら生活習慣病リスクを高めるため、間接的に心不全リスクを高めます。
心不全パンデミックが引き起こす3つのリスク
1.医療費の増大と社会への負担
心不全は慢性疾患であり、多くの場合、生涯にわたる治療が必要となります。 薬剤、定期的な通院、検査など、継続的な医療費がかかります。
2.医療現場の逼迫
心不全患者が増加することで、医療資源(医師、看護師、病床、薬剤など)が逼迫し、他の疾患の治療にも影響を与える可能性があります。
3.患者の生活の質(QOL)の低下
心不全は、治療は可能ですが完治が難しい病気です。階段の上り下りや、少しの運動でも息切れがしたり、むくみで靴が履けなくなったりすることもあります。 そのため、生活の質が大きく低下してしまいます。心不全は、入院後、適切な治療により改善し退院することはできますが、再入院を繰り返すケースも少なくありません。

心不全は悪化と回復を繰り返しながら進行する

心臓を守るために私たちができること
①早期発見・早期治療が重要:!定期的な健康チェックをしましょう。
心不全は、症状が徐々に現れるため気づきにくい病気です。ご自身の生活習慣を見直し、定期的な健康診断で早期発見に努めることが大切です。決して他人事ではありません。 少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
~当院でできる心疾患関連検査~
心疾患リスクAI検査
https://www.dock-tokyo.jp/results/heart/ai.html
冠動脈石灰化スコア
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②日常生活で意識するポイント
1.適切な食事
塩分を控え、果物や野菜を多く摂るバランスの良い食事を心がけましょう。 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を制限し、不飽和脂肪酸を多く含む魚介類などを積極的に摂取しましょう。
2.運動
身体活動量を増やすことで、循環器病の発症リスクが低下するとされています。ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動が効果的です。目安として、1日あたり60分以上を心がけましょう。
3.禁煙
喫煙は、心臓病のリスクを大幅に増加させます。 禁煙は、心臓を守る上で最も重要な行動の一つです。
4.アルコールの適量摂取
過剰な飲酒は心臓に悪影響を与えます。 節度ある飲酒を心がけましょう。
5.ストレス管理
慢性的なストレスは、心臓に悪影響を与える可能性があります。 ストレスを軽減するための方法(ヨガ、瞑想、趣味など)を見つけ、積極的に実践しましょう。
6.睡眠の確保
質の良い睡眠を十分に取ることは、心臓の健康に重要です。 毎日7~8時間程度の睡眠を心がけましょう。

参考
- 国立循環器病研究センター 心不全と虚血性心疾患の疫学
https://www.ncvc.go.jp/coronary2/column/20211209_05.html - 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
- 日本心不全学会 心不全手帳(第2版)
- 坂田泰彦著. “心不全の疫学:心不全パンデミック” 日本内科学会雑誌 109: 186~190, 2020