人間ドック・健診センター コラム
正しいアルコール(エタノール)消毒液の使い方知っていますか?
新型コロナウイルス感染拡大防止のために外出先では消毒スポットがおかれていることが増えました。
スーパーや飲食店など多くの施設で消毒ができる状況です。
しかし、ただアルコール消毒液を手に付けるだけで満足していませんか?
あなたの手指消毒は不十分かもしれません。
正しい手指消毒をマスターして、新型コロナウィルス感染拡大防止に努めましょう。
ポイントは大きく2点です。
・ポンプはしっかり押しきるまで1プッシュ!15秒以上すりこめないようなら追加する
・指先を中心につけて、正しい手順でまんべんなく刷り込む
アルコール消毒液の使用量
スプレータイプなら1プッシュ、ジェルタイプなら2プッシュ
手洗いせっけんや消毒液を扱うSARAYAで行ったアンケートでは、医療施設で使用されているアルコール手指消毒剤はジェルタイプが66%を占めています。日本では2000年代初頭に発売が開始されたジェルタイプが確実に浸透していることが伺えます。それぞれのタイプで最も多かった使用量および擦り込み時間は、スプレータイプで「3mL以上」および「15秒以上」、ジェルタイプで「1.5mL以上2mL未満」および「15秒以上」でした。使用量はスプレータイプの方が早く乾いてしまうため、ジェルタイプや泡タイプと比べると多い傾向にあります。 擦り込み時間については、CDCとWHOのガイドラインでは「10~15秒間擦りあわせた後、手が乾いた感じであれば、塗布量が不十分」、WHOのガイドラインでは「手指衛生の全工程時間:20~30秒」とあり、これらのガイドラインに即して規定されています。まずは、最後まで1プッシュ15秒すりこめないようなら追加すると覚えておくとよいでしょう。ジェルタイプはボトルによって出る量が違いますが、1mLのものが多いので2プッシュがお勧めです。
消毒液の受け方・すり込み方によって消毒の出来栄えに差が!?
SARAYAではA・B・Cの方法でアルコール消毒液による手指消毒を実施し、親指の3ケ所(爪の先端・指腹部・爪の根元)を検査してコロニーの検出があった場合を陽性とし、それぞれの陽性率を示した実験を行っています。
A:指先を伸ばした状態で消毒液を受け、手指にすり込む方法は指示なく自由にすり込む
B:指先を曲げて爪に消毒液がかかるように受け、手指にすり込む方法は指示なく自由にすり込む
C:指先を曲げて爪に消毒液がかかるように受け、手指へのすり込みは指示に沿って行う
爪に消毒液がかかるように受け、指示に沿って(全体に消毒液が行きわたるように)すり込みを行うと消毒の効果が高まるということがわかります。
爪部分にはこんなにも菌数が!
爪の下に多数の菌が存在することを明らかにしたデータです。爪の下をマニキュアで覆った場合と覆わなかった場合とで、それぞれに殺菌剤未配合の普通石けんで手洗いを複数回行い、手指から回収される菌数の変化を調べました。 爪先を覆った場合は菌数は減少していきますが、爪先を覆わなかった場合は、手洗いを複数回行っても多数の菌が回収されています。つまり、爪下の隙間部分に菌が多数存在していることがわかります。
このことからも、先ほど同様爪に消毒液がかかるように消毒することの重要性がわかります。
ラビング法(ウォーターレス法)とは?
上記で説明しましたアルコールでの手指消毒を手術前に行うことで、手の表面に付着した通過菌の除去および、皮膚常在菌の減少(表面にいる常在菌の削減が主目的)を目的にしたもので、2002年にCDC(Centers for Disease Control and Prevention:米国疾病予防管理センター)が発表した「医療現場における手指衛生のためのガイドライン」において推奨された方法になります。
もちろん手術時は、通常の石鹸での手洗い後にアルコールでの擦式剤(擦り込み式)で消毒を行います。
手に付いた汚れは、石けんによる手洗いでしっかり除去し、落としきれなかった細菌・ウイルスをアルコールを使用して消毒するという考え方です。
アルコール(エタノール)消毒液の適正使用量は?ゲル製剤とリキッド製剤で差はあるの?
SARAYAで行ったアンケートでは、医療施設で使用されているアルコール手指消毒剤はジェルタイプが66%を占めています。日本では2000年代初頭に発売が開始されたジェルタイプが確実に浸透していることが伺えます。
それぞれのタイプで最も多かった使用量及びすり込み時間は、スプレータイプで「3mL以上」および「15秒以上」、ジェルタイプで「1.5mL以上2mL未満」および「15秒以上」、泡タイプで「1mL以上1.5mL未満」および「15秒以上」でした。
使用量はスプレータイプの方が早く乾いてしまうため、ジェルタイプや泡タイプと比べると多い傾向にあります。
すり込み時間については、CDCとWHOのガイドラインでは「10~15秒間すりあわせた後、手が乾いた感じであれば、塗布量が不十分」、WHOのガイドラインでは「手指衛生の全工程時間:20~30秒(図解)」とあり、これらのガイドラインに即して規定されているようですが、まずは、ポンプはしっかり押しきるまで1プッシュ!15秒以上すりこめないようなら追加すると覚えておくとよいでしょう。
https://med.saraya.com/communication/voice/shiyoryo/2015.html
アルコール(エタノール)消毒の濃度による殺菌(除菌・消毒)効果
日本薬局方(局方): 76.9~81.4 v/v%
米国薬局方 USP-NF : 68.5~71.5 v/v%
WHOガイドライン: 60~80 v/v%
とばらつきはありますが、概ね60~80 v/v%(vol%)があれば、さまざまな菌・ウイルスに対しての殺菌効果が期待できると考えられます。
※一部の抗酸菌では72 v/v%以上の濃度が必要なため70~75 v/v%が推奨されます。
アルコール濃度の表記は、主に2つあります
- 質量パーセント濃度: wt% or w/w%
- 容量パーセント濃度: vol% or v/v%
※質量濃度と容量濃度の換算表は「一般社団法人アルコール協会」が公開しています。
http://www.alcohol.jp/expert/expert_table/09%20youryou%20jyuuryou.pdf
一般的には、容量パーセント濃度が使用されています。
特に表記がない場合、容量パーセント濃度になります。
外出先には携帯用アルコール消毒液を
新型コロナウイルスは眼、鼻、口の粘膜から体内に侵入します。人間は無意識に眼、鼻、口に触れるのですが、その頻度は多く、1時間に23回も触れるというデータがあります。すなわち、3分に1回の頻度で手指が顔に触れているのです。そのため、手指が粘膜に触れる前に手洗いすることが大切であり、手洗いの頻度は多くなります。しかし、石鹸と水道水での手洗いを頻回に行うことは不可能です。手洗いするためには、毎回、手洗い場まで移動しなくてはならないからです。しかし、携帯のアルコール手指消毒液を持っていれば、常に手指消毒することができます。従って、外出時にはアルコール手指消毒液を携帯することが奨められます。
普通石鹸と流水で手を15秒間洗っても皮膚の細菌数は1/4~1/12にしか減少しません。30秒間でも1/63~1/630の減少です。一方、アルコール手指消毒液は30秒後で手指の細菌数を約3,000分1に減少させ、1分後には10,000~100,000分の1まで減少させることができるのです6)。従って、手指に付着した病原体の減少と手を清潔にするのに要する時間の短縮いった点からも、アルコール手指消毒液が推奨されるのです。
携帯用アルコール消毒液では15秒から30秒すりこめる量を少しずつ手に取り刷り込みましょう。
外出先以外では手洗+手指消毒を!
衛生的手洗い「洗って・ふいて・消毒」の効果
対象菌として大腸菌を手指に塗布し、洗って・ふいて・消毒の各工程で菌の減り具合を調べる実験を行い、回収された菌数をグラフに示しました。縦軸を対数の値で示しています。石けんで洗うだけで菌数が2ケタ程度減少し、ペーパータオルで水分および汚れをふき取るようにすると、さらに1ケタ減少します。(1ケタ減少するということは菌数が1/10程度になったことを示し、2ケタ減少するということは、菌数が1/100程度になったことを示します。)アルコールを噴霧して手指消毒を行うとさらに1ケタ以上減少しほぼ検出限界以下となり、この連続した「洗って・ふいて・消毒」のプロセスが有効であることが確認できます。
外出先で手が洗えない時を除いては、「洗って、ふいて、消毒」の基本を忘れずに行いましょう。
https://pro.saraya.com/pro-tearai/science/index.html
空間噴霧について
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに対するアルコール消毒に関する見解の中で、「室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されない」としており、また、「路上や市場と言った屋外においてもCOVID19やその他の病原体を殺菌するために空間噴霧や燻蒸することは推奨せず」「屋外であっても、人の健康に有害となり得る」としています。また、「消毒剤を(トンネル内、小部屋、個室などで)人体に対して空間噴霧することはいかなる状況であっても推奨されない」としています。
また、米国疾病予防管理センター(CDC)は、医療施設における消毒・滅菌に関するガイドラインの中で、「(アルコール)消毒剤の(空間)噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分であり、日常的な患者ケア区域における一般的な感染管理として推奨しない」としています。
部屋の空気はよく換気することで、感染リスクが低減します。火災の危険もありますので、アルコール消毒液をの噴霧は行わないようにしましょう。