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感染症ニュース(23年10月11日号)

2023年10月11日

感染症ニュースでは現在流行している感染症の状況や感染症に関する情報を発信しています。

 

【トピックス】

◆感染動向調査まとめ【Medical Tribune 感染症 Weekly Report】

インフルエンザ、警報基準値目前に【感染症動向調査第39週:9月25日~10月1日】

https://medical-tribune.co.jp/rensai/%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87weeklyReport20230925.pdf

 

◆気にしすぎないで、乳幼児との食器共有

日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会は8月31日、一部で齲蝕菌の感染予防に有用との見方もある乳幼児と親との食器共有に関して「意見」を掲載。「食器の共有をしないことで齲蝕予防できるという説の科学的根拠は必ずしも強いものではない」とし、児の齲蝕予防策として親による毎日の仕上げ磨きなどを勧めた。

口腔細菌感染は食器共有前から起こっている

一般に、乳幼児と親の食器共有は離乳食開始時期に当たる生後 5~6カ月ごろから始まる場合が多いが、口腔細菌の親子間感染はそれ以前から生じていることが報告されている。乳幼児の4カ月健診時に448組の母児から採取した舌スワブ検体を解析した検討では、乳幼児と実母が共有する口腔細菌叢の相対存在量は中央値で9.7%(範囲0.0~99.3%)だった(mBio 2022; 13: e0345221)。

また、3歳児3,035例の歯科検査結果と保護者に対するアンケートにより齲蝕の原因を見た検討では、食器共有と齲蝕に関連は認められなかった(Caries Res 2011; 45: 281-286)。さらに、親子の唾液接触により児のアレルギーリスクが低下するとの報告もある(J Allergy Clin Immunol Glob 2023; 2: 100108、関連記事「親子の唾液接触でアレルギーを抑制か」)。

フッ化物配合歯磨き剤の利用が効果的

以上から日本口腔衛生学会は「食器共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ぐことを気にしすぎる必要はない」と指摘。児の有効な齲蝕予防策として、
①砂糖の摂取を控える
②フッ化物配合歯磨き剤を利用する
③親が毎日仕上げ磨きをする
を推奨した。なお、フッ化物配合歯磨き剤については、今年(2023年)4月に同学会と日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科医学会が合同で「う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法【普及版】について」を発表している。

 

◆新型コロナ・小児の重症化を学会が懸念

日本小児科学会が見解を発表

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、厚生労働省は今年(2023年)秋以降、公費負担は継続しながらもワクチンの接種勧奨は重症化リスクが高い人に限定すると決定した。これを受けて日本小児科学会は10月3日に見解を発表。同学会は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の小児感染者においてまれながら急性脳症や心筋炎の発症例が報告されていることなどを懸念し、生後6カ月以上の全ての小児に対し、引き続きSARS-CoV-2ワクチン接種を推奨するとした。

従来のワクチンでは感染予防できず

SARS-CoV-2のオミクロン亜系統は、今年5月以降BA.2、BA.5からXBB.1系統に変化し、さらにEG.5系統の割合が増加している。従来のワクチン(起源株1価ワクチンまたはBA2・BA5の2価ワクチン)やXBB.1系統以前の感染によって得られた免疫は、現在増加傾向にある亜系統による感染を十分に予防できず、既感染者でも再感染することが報告されている。今後、インフルエンザなど他の季節性感染症と同時に流行が拡大することも懸念される。

一方、今年度の秋冬接種に用いられるXBB.1.5対応の1価ワクチンは、従来の2価ワクチンよりもXBB.1.5系統株に対して高い中和抗体価を誘導し、発症予防効果が増強されるとの報告がある。

ワクチン追加接種による死亡抑制効果64.5%

小児に対するワクチン接種には、発症や重症化、入院の予防効果が示されている。ワクチンの長期的効果を検討するために11歳以下の小児100万人以上を対象として実施された米国の調査では、5~11歳児における初回接種(2回接種)、および追加接種の有効性が示された(Lancet Infect Dis. 2023; S1473-3099: 00272-4)。

調査によると、2価ワクチンを用いた追加接種による発症防効果は接種後1カ月時点で76.7%と高かった。さらに0~4歳児における初回接種(3回接種)の発症予防効果は接種後2カ月時点で63.8%、5 カ月時点でもなお58.1%を示した。また、いずれの年齢群においても、発症予防効果を上回る重症化および入院予防効果が確認されている。

5~25歳の小児および若年成人に対するワクチンの死亡抑制効果を検討した海外の報告では、オミクロン株流行期における2回接種による死亡抑制効果は42%(95%CI 31.0~51.4%)で、追加接種により64.5% (同43.3~77.8%)まで増強されるとの結果が示された(JAMA Pediatr 2023; 177: 1100-1102)。

日本小児科学会が、生後6カ月以上の全ての小児にSARS-CoV-2ワクチン接種を推奨する主な理由は以下の通り。

① 流行株の変化により今後も流行拡大が予想される

② 国民の約半数は未感染者であり、今後も感染機会が続く

③ 小児においても重症例・死亡例が発生している

④ 小児へのワクチンは有効である

⑤ 小児のワクチン接種に関する膨大なデータが蓄積され、より信頼性の高い安全性評価が継続的に行われるようになった

 

◆新型コロナウイルスについて

2023 年第 38 週(9月18 日〜9月24 日)における定点当たり報告数は 11.01 (報告数54,346 人)であった。

<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生動向調査 第38週(9月18日~9月24日)(’23/9/29現在)>

https://www.mhlw.go.jp/content/001151300.pdf

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